知らなかった!神社参拝のたびに関わっているのに誰も知らない神社本庁の話
毎年お正月になると初詣に出かけ、子どもが生まれればお宮参りや七五三で神社へ向かう。受験の前には合格祈願、結婚式を神前で挙げた方もいるでしょう。日本人の生活はこれほどまでに神社と深くつながっているのに、「神社本庁(じんじゃほんちょう)」という名前を聞いてもピンとこない方がほとんどではないでしょうか。
はじめまして。ライターの佐々木雅子です。私は子どもの頃から祖父母に連れられて毎年初詣に出かけており、神道や日本の伝統文化について12年以上にわたって調べ、記事を書いてきました。
じつは神社に参拝するたびに、私たちは知らず知らずのうちに「神社本庁」という組織と関わっています。神職(神主さん)の資格も、年末に頒布されるお神札(おふだ)も、全国どの神社でも作法が共通しているのも、すべてこの組織が深く関わっているのです。
この記事では、「神社本庁って何?」という基本の疑問から、設立の背景、具体的な活動内容、そして「なぜあの有名神社は加盟していないの?」といった素朴な疑問まで、わかりやすくお伝えします。
目次
「神社本庁」とは何者か?意外と知られていないその正体
「神社本庁」という言葉を聞いて、多くの人がまず疑問に思うのが「どこか政府の機関なの?」ということではないでしょうか。名前に「庁」とついているので、消費者庁や文化庁のような官公庁をイメージするのは自然なことです。
しかし、神社本庁は官公庁ではありません。宗教法人法に基づく文部科学大臣所轄の「包括宗教法人」です。難しく聞こえますが、ひらたく言えば「多くの神社をひとつにまとめた民間の宗教法人」ということになります。
その規模は、日本最大の宗教団体と称されるほどです。全国に約8万社ある神社のうち、7万8千社以上が加盟しており、各都道府県に「神社庁(じんじゃちょう)」という地方支部を持っています。
事務所は東京都渋谷区代々木の明治神宮の隣に構えています。「本庁」の名こそついていますが、組織の性格はむしろ神社同士の「連合体」や「組合」に近いものです。各神社の自主性は尊重されており、強大な権力で神社を支配するというものではありません。
神社本庁の目的は、神社の管理・指導を中心に、伝統を重んじた祭祀の振興、神社神道の普及、そして日本と世界の平安を祈念することとされています。
神社本庁はなぜ生まれたのか?戦後の激動から始まった物語
神社本庁の設立には、戦後日本の歴史が色濃く反映されています。この背景を知ると、この組織がなぜ存在するのかが、ぐっとわかりやすくなります。
戦前の「国家神道」の時代
明治維新以降、日本の神社は国家の管理のもとに置かれていました。いわゆる「国家神道」の体制です。神職は官吏(国家公務員)に準じた扱いを受け、神社は国家祭祀を担う半ば公的な施設として機能していました。国が神社を統括する行政機関として「内務省神社局」、のちに「神祇院(じんぎいん)」が置かれていました。
GHQによる「神道指令」と組織の解体
1945年8月15日、日本が終戦を迎えると事態は一変します。占領政策を進めるGHQ(連合国軍総司令部)は、同年12月15日に「神道指令」を発令。これによって神社の国家からの分離が命じられ、翌1946年には神祇院が廃止されました。
国家神道の枠組みが崩れたことで、全国の神社は一夜にして「独立」を余儀なくされたのです。これまで国に守られ、管理されていた約8万社の神社が、突然バラバラになってしまうという危機的な状況でした。
3つの民間団体が結集して誕生
この状況を受け、当時民間の神社関係団体であった「皇典講究所(こうてんこうきゅうしょ)」「大日本神祇会(だいにほんじんぎかい)」「神宮奉斎会(じんぐうほうさいかい)」の3団体が中心となり、全国神社の総意のもとに新たな組織を立ち上げます。それが1946年2月3日に設立された「宗教法人 神社本庁」です。
強力な中央集権組織ではなく、各神社の独立性を尊重しながら連携を図る「緩やかな連合体」という形を選んだことが、神社本庁の大きな特徴です。伊勢神宮(正式名称は「神宮」)を「本宗(ほんそう)」として特別な存在と位置づけ、その御神徳を仰ぎながら、日本の神社文化を守り続けています。
実はあなたの参拝にも関係している!神社本庁の主な仕事
神社本庁の存在は身近に感じられないかもしれませんが、神社参拝に行くたびに、その活動の恩恵を受けています。具体的にどのような仕事をしているのか、見ていきましょう。
神社の管理・指導と祭祀の統一
神社本庁は「神社祭祀規程」や「神社財務規程」といった規則を策定し、加盟神社が適切に運営されるよう指導しています。全国どこの神社を訪れても「二礼二拍手一礼」という参拝作法が共通しているのは、神社本庁が統一的な指導を行っているからです。初詣、七五三、お宮参りなどで行う所作が全国的に共通しているのも、こうした体制のおかげです。
また、大規模な神社では対応が難しい被災時の支援調整なども神社本庁の役割のひとつです。自然災害で被害を受けた神社があれば、他の神社からの支援を取りまとめることもあります。
神宮大麻(お神札)の頒布
年末になると、地域の神社やその世話役さんが家々を訪れ「神宮大麻(じんぐうたいま)」を持ってくることがあります。あのお神札の全国頒布を担っているのが神社本庁です。
神宮大麻は、伊勢の神宮で一体一体丁重に奉製された天照大御神(あまてらすおおみかみ)のお神札です。神社本庁は神宮司庁から神宮大麻の頒布を委託されており、各都道府県の神社庁を通じて全国の神社・神職・氏子総代の手によって、各家庭に届けられています。神棚に飾るあのお神札の背景には、神社本庁を中心とした全国的な流通の仕組みがあったのです。
神職の資格制度「階位(かいい)」
宮司さんや神主さんが神社で神職として奉仕するためには、神社本庁が定める「階位(かいい)」という資格が必要です。階位は5段階あり、以下のように分類されています。
| 階位 | 読み方 | 概要 |
|---|---|---|
| 浄階 | じょうかい | 永年奉仕し功績のあった神職に与えられる名誉階位 |
| 明階 | めいかい | 別表神社(有名大社など)の宮司・権宮司に必要 |
| 正階 | せいかい | 一般神社の宮司、別表神社の禰宜に必要 |
| 権正階 | ごんせいかい | 中小規模の神社の宮司に必要 |
| 直階 | ちょっかい | 神職のスタートとなる基礎資格 |
この資格を取得するためには、神社本庁が関わる神職養成機関での学習が必要です。主な養成機関は、東京の「國學院大學(こくがくいんだいがく)」と三重県伊勢市の「皇學館大学(こうがくかんだいがく)」の2校で、所定の課程を修了することで資格が授与されます。神社本庁はこの神職養成の枠組みを整備し、質の高い神職を全国に送り出す役割も担っています。
都道府県ごとの「神社庁」を通じた地域活動
神社本庁の地方組織として、各都道府県に「神社庁(じんじゃちょう)」が設置されています(神社本庁とは別の組織です)。神社庁は地域の神社に関する事務をとりながら、地域活動の振興にも力を注いでいます。
- 地域の神社に関する相談窓口になる
- 神職の研修や任免に関わる
- 氏神神社がわからない人への案内
氏神神社がどこかわからなくなったとき、都道府県の神社庁に問い合わせることができるのも、こうした地方組織があるおかげです。
「神社本庁」と「神社庁」、どう違うの?
ここで多くの人が混乱しやすい点を整理しましょう。
- 神社本庁(じんじゃほんちょう):東京渋谷区に本部を置く全国組織。宗教法人。
- 神社庁(じんじゃちょう):各都道府県に置かれた地方機関。
「神社本庁」の地方支部が「神社庁」という関係です。たとえば「東京都神社庁」「大阪府神社庁」といった名称で各地に設置されており、地域の神社と神社本庁のパイプ役を担っています。両者は名前が似ていて紛らわしいのですが、機能が異なります。
有名神社がすべて加盟しているわけではない
「神社本庁に加盟しているから参拝して良い、していないからダメ」ということはまったくありません。ただ、全国の有名神社がすべて加盟しているわけではないという事実は意外と知られていません。
以下のような知名度の高い神社が、神社本庁に加盟していない「単立宗教法人」として独立して運営されています。
- 靖国神社(東京都)
- 伏見稲荷大社(京都府)
- 日光東照宮(栃木県)
- 鎌倉宮(神奈川県)
- 金刀比羅宮(香川県)
- 富岡八幡宮(東京都)
- 気多大社(石川県)
独立している神社には、歴史的な経緯や運営方針の違いなど、それぞれの事情があります。それぞれの神社が最適と考える形で信仰と文化を守り続けているということです。ちなみに単立宗教法人の規模が大きいものだけでも約2,000社あるとされており、それ以外の小さな祠(ほこら)なども含めると、神社の総数は20万社以上になるとも言われています。
神社本庁が取り組む地域と人をつなぐ活動
神社本庁の活動は、管理・指導といった裏方的な仕事だけにとどまりません。全国の神社が地域の人々とつながるための取り組みも積極的に支援しています。
神社は古来より地域社会の中心として、文化や信仰を通じて人々をつないできました。お祭りや行事を通じて神様への感謝を表すだけでなく、地域の人々が一体となって楽しむ場を提供することで、神社は地域と人を結ぶ大切な存在であり続けています。
神社本庁が取り組む地域と人をつなぐ活動に密着!神社はもっと身近にでは、例大祭で海外の青年が神輿担ぎを体験したり、七夕祭でデジタル紙芝居を上演して子どもたちを喜ばせたり、月1回のフリーマーケットと絵本の読み聞かせで地域に憩いの場を提供したりと、全国各地の多彩な取り組みが紹介されています。
神社本庁の公式サイト(https://www.jinjahoncho.or.jp/)でも、全国の神社の活動報告が定期的に掲載されており、地域の活性化に向けた取り組みを誰でも確認することができます。
これらの活動からわかるのは、神社本庁が全国の神社を「単なる宗教施設」ではなく「地域コミュニティの核」として機能させようとしている姿勢です。人口減少や過疎化が進むなか、地域に根ざした神社の存在意義をどう守っていくかは、神社本庁にとっても重要な課題となっています。
神社本庁が定める「敬神生活の綱領」とは
神社神道には、仏教の戒律やキリスト教の十戒のような統一的な教義はありません。ただ、神社本庁は1956年(昭和31年)に「敬神生活の綱領(けいしんせいかつのこうりょう)」という3つの実践綱領を定めています。
- 神の恵みと祖先の恩とに感謝し、明き清きまことを以て祭祀にいそしむこと
- 世のため人のために奉仕し、神のみこともちとして世をつくり固め成すこと
- 大御心(おおみごころ)をいただきてむつびやわらぎ、国の隆昌と世界の共存共栄とを祈ること
難しく聞こえますが、要約すると「感謝の心を持ち、世のために奉仕し、和を以って世界の平和を祈る」ということです。神社参拝の根本にある精神性が、ここに集約されています。
まとめ
神社本庁について、基本から深いところまでお伝えしてきました。改めてポイントを振り返ります。
- 神社本庁は官公庁ではなく、全国約7万8千社を包括する民間の宗教法人(包括宗教法人)
- 1946年2月3日、GHQの「神道指令」を受けた戦後の激動の中で設立された
- 神宮大麻(お神札)の全国頒布、神職の資格制度、各神社の管理・指導などを担っている
- 各都道府県の「神社庁」は、神社本庁の地方機関
- 靖国神社・伏見稲荷大社・日光東照宮などは加盟していない「単立宗教法人」
- 地域と人をつなぐ活動の支援も重要な役割のひとつ
初詣で手を合わせるとき、七五三でお子さんの成長を祈るとき、その場所をずっと守り続けてきた仕組みや人々のことを少し思い浮かべてみてください。神社がいつも変わらぬ姿でそこにあるのは、決して偶然ではありません。神社本庁を中心とした神社界の地道な営みがあってこそです。
次に神社を訪れる機会があれば、ぜひその背景にある歴史や組織にも思いを馳せながら、いつもより少し丁寧にお参りしてみてはいかがでしょうか。
最終更新日 2026年2月27日 by sticep
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