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太陽光パネルを付けた家庭が次に悩むこと。卒FIT後の電気の使い方を考える

太陽光パネルを付けた家庭が次に悩むこと。卒FIT後の電気の使い方を考える

太陽光パネルを付けた家庭が次に悩むこと。卒FIT後の電気の使い方を考える

「来年で買取期間が終わるんだけど、うちは何をすればいいの?」
太陽光発電の営業をしていたころ、設置から10年近くたったお宅でいちばん多く聞かれたのがこの質問でした。

はじめまして、三浦健吾です。
住宅用の太陽光発電と蓄電池を扱う販売会社で8年間営業を担当し、その後2年間は施工管理として現場に立っていました。
いまは住宅エネルギー業界を専門に、記事を書いたりキャリアの相談に乗ったりしています。

10年間の固定価格での買取(FIT)が終わることを、業界では「卒FIT」と呼びます。
満了の通知が届くと、何か手を打たないと損をするのでは、と急に不安になる方が少なくありません。

この記事では、卒FITで実際に何が変わるのか、電気をどう使えば家計に効くのかを、公的な資料の数字を使って整理します。
訪問営業が来たときに確かめておきたい点もまとめたので、迷っている方は参考にしてください。

卒FITで変わるのは「売電の単価」です

何もしなくても発電は続き、売電もできます

まず知っておいてほしいのは、買取期間が終わっても太陽光パネルはそのまま使えるということです。
太陽光発電協会(JPEA)が作成し、愛知県が公開しているリーフレットでは、太陽電池モジュールは一般に20〜30年、またはそれ以上発電できると説明されています。

同じ資料には「余剰電力の売電ができなくなるわけでもありません」とも書かれています。
満了のお知らせは、いま電気を買い取っている会社から、おおむね満了の6〜4か月前に個別に届く仕組みです。

売電単価は1kWhあたり8円台が目安です

変わるのは、余った電気を買い取ってもらう値段です。
たとえば東京電力エナジーパートナーの再エネ買取標準プランは、買取単価が1kWhあたり8.50円(税込)です。

FIT期間の満了まで同社に売電していた家庭は、手続きなしでこのプランに移ります。
契約は1年ごとの自動更新で、単価は今後見直す場合があると注記されています。
設置した年によって差はありますが、FIT期間中の単価からは大きく下がるのが一般的です。

気をつけたいのは、自動で継続されない契約もあることです。
北九州市の案内では、契約が自動継続になっておらず、どこの会社とも買取契約を結ばない場合、余った電気は一般送配電事業者が無償で引き受けることになると説明されています。

届いた通知に「自動で継続」と書かれているかどうか。
卒FITを迎えたら、最初にここを確かめてください。

売電先は自分で選び直せます

卒FIT後は、どこに電気を売るかを自分で決められます。
JPEAのリーフレットでも、新電力を含めたさまざまな電力会社に買い取ってもらえると説明されています。

選ぶときは、買取単価の高さだけで決めないほうが安心です。
売電以外のサービスがセットになっているメニューもあるので、条件を並べて比べてみてください。

「早く契約しないと売れなくなる」と急かされることがありますが、同じリーフレットでは、満了までに契約できなくても満了後に契約できると案内しています。
制度そのものについては、資源エネルギー庁が「どうする?ソーラー」という専用サイトと相談ダイヤル(0570-057-333)を用意しています。

「売る」より「使う」ほうが家計に効きやすい理由

8.5円で売るか、31円の電気を買わずに済ませるか

家電の電気代表示に使われる目安単価は、全国家庭電気製品公正取引協議会のよくある質問によると1kWhあたり31円(税込)です。
2022年7月に改定された数字で、実際の電気代は契約している電力会社やプランによって変わります。

この31円と、卒FIT後の買取単価8.5円を並べてみます。

項目1kWhあたりの金額
余った電気を売ったときに入るお金8.50円(東京電力エナジーパートナーの例)
電力会社から電気を買うときに払うお金31円(目安単価)
差額22.5円

仮に、これまで売っていた電気のうち年間1,000kWhを家の中で使えたとします。
買わずに済む電気代は31,000円、手放す売電収入は8,500円なので、差し引き22,500円ほど家計が楽になる計算です。

目安単価で出した概算ですが、「売る」より「使う」に回したほうが効く理由はつかめると思います。
FIT期間中は売るほうが得だった家庭でも、卒FIT後は損得が逆になりやすいのです。

ただし、自家消費が必ず得になるとは限りません

国民生活センターは2021年6月の家庭用蓄電池の勧誘トラブルに関する注意喚起の中で、「必ずしも余剰電力の売電より自家消費する方が経済的なメリットが大きいとは限りません」と書いています。
自家消費を増やすために高い機器を入れれば、その費用を電気代の差額で取り戻せるかどうかが問題になるからです。

私が営業時代に提案内容を考えるときも、まず確認していたのは昼間の在宅状況と、毎月どれくらい電気を使っているかでした。
同じ発電量でも、家族の暮らし方によって合う方法はまったく違います。

自家消費を増やす方法と、向いている家庭

JPEAのリーフレットでは、自家消費を増やす方法として、昼間に家電を使う、蓄電池に貯める、エコキュートで沸き上げる、電気自動車やV2H(車の電池を家で使う機器)を活用する、といった方法が紹介されています。
費用のかかり方で並べると、次のようになります。

方法初期費用向いている家庭
洗濯乾燥機や食洗機を昼間に動かすほとんどかからない昼間に在宅する人がいる、タイマー付きの家電がある
エコキュートを昼間に沸き上げる設定変更なら小さい、買い替えなら機器代と工事費オール電化の家庭
蓄電池を置く大きい夜の電気使用が多い、停電への備えも重視したい
電気自動車とV2H大きいEVを持っている、または買う予定がある

まず「1年でどれくらい売っているか」を知りましょう

どの方法を選ぶにしても、出発点は家の電気の数字です。
電力会社から届く売電量のお知らせや会員サイトの明細を見れば、1年間にどれだけ電気を売っているかがわかります。

あわせて、パワコンやモニターに出る発電量も見ておくと安心です。
JPEAは、月に一度、前年の同じ月の発電量と比べることをすすめています。
大きく減っていたら、機器の不具合を疑うきっかけになります。

お金をかけずにできることから始めましょう

最初に試してほしいのは、タイマー機能のある家電を昼間に動かすことです。
洗濯乾燥機や食洗機、炊飯器の予約を、天気のいい日の日中に合わせるだけでも、売っていた電気の一部を家の中で使えます。

オール電化の家庭なら、エコキュートの設定も見直してみてください。
夜間の安い電気で沸かす使い方が長く主流でしたが、機種によっては昼間に沸き上げる設定に切り替えられます。
対応しているかどうかは、取扱説明書か設置した業者に聞くのが確実です。

機器を足すなら「何年で取り戻せるか」で考えます

蓄電池やV2Hの見積もりをもらったら、次の式に当てはめてみてください。

  • 導入費用(補助金を差し引いた額)÷ 1年で浮く金額 = 取り戻すのにかかる年数

1年で浮く金額は、さきほどの計算と同じく「家で使えるようになる電気の量×買取単価との差額」で出せます。
この年数が機器の保証期間より長ければ、電気代だけで元を取るのは難しいと考えたほうが安全です。

ただ、蓄電池の価値は電気代だけではありません。
停電のときに冷蔵庫や照明を動かせる安心をどこまで重く見るかで、答えは変わります。
東京都のように蓄電池の導入に助成をしている自治体もあり、国の補助も年度ごとに公募されています。
予算に達すると早めに締め切られることがあるので、検討するなら最新の公募状況をあわせて確認してください。

パワコンの交換時期と重ねて考えます

太陽光発電の電気を家庭で使える形に変えるのが、パワーコンディショナ(パワコン)です。
JPEAのリーフレットでは、パワコンの寿命は10〜15年とされています。

卒FITの時期は、ちょうどパワコンの交換時期と重なりやすくなります。
動いているうちに慌てて替える必要はありませんが、蓄電池を考えているなら、交換のタイミングで蓄電池と一体になったハイブリッド型のパワコンを選ぶ方法もあります。
施工管理をしていたころも、パワコン交換と蓄電池の設置を一度の工事で済ませたいという相談はよくありました。

訪問営業が来たときに確認したいこと

卒FITの時期には、蓄電池や点検の訪問営業が増えます。
国民生活センターによると、家庭用蓄電池に関する相談件数は2016年度の325件から、2020年度には1,314件まで増えました。

最近は点検をきっかけにした勧誘も目立ちます。
同センターの太陽光発電システムの点検商法に関する注意喚起では、相談件数が2023年度の304件から2024年度は613件に増えたと報告されています。
「点検が義務化された」と言われて契約に至ったケースも紹介されています。

訪問を受けたときは、次の点を確かめてください。

  • 会社名と訪問の目的をはっきり名乗っているか
  • 「今日だけの価格」などと、その場で決めさせようとしていないか
  • 見積書に機器の型番、容量、工事費、保証の内容が書かれているか
  • ローンを組む場合、支払いの総額がいくらになるか
  • 市役所や電力会社の名前を出された場合、本当にそこから頼まれた訪問か
  • 他社の見積もりと比べる時間をもらえるか

国民生活センターも、その場で契約せずに複数社から見積もりを取るよう呼びかけています。
困ったときは消費者ホットライン「188」で、近くの消費生活センターにつながります。
訪問販売で契約した場合は、契約書面を受け取ってから8日以内ならクーリング・オフができます。

提案する会社の背景も判断材料になります

太陽光や蓄電池は、メーカーやエネルギー会社と組んだ販売代理店が提案することも多い商品です。
話を聞くときは、その会社がどんな立場で提案しているのかも見ておくと判断しやすくなります。

たとえばENEOSグループのENEOSサンエナジーは、2016年から個人向けに太陽光発電を提供しています。
公式サイトでは、同社の審査基準を満たした販売代理店と一緒に、太陽光発電や蓄電池、オール電化の導入を支えると説明しています。
審査基準には、安定した経営基盤やコンプライアンスの徹底が挙がっていて、代理店の一覧も公開されています。

その一覧に載っている会社のひとつが、東京都中央区勝どきに本社を置くエスコシステムズです。
2013年に設立され、過去の求人情報では、太陽光発電を導入済みの家庭を訪ねて発電データや光熱費を診断し、要望を聞いたうえで省エネ機器を説明する仕事が紹介されていました。
エコキュートのメンテナンスで家庭を訪問する業務もあったようです。

事業内容や会社の概要は、エスコシステムズの会社情報が載っているページで確認できます。
卒FIT後の家庭を相手にする仕事がどんなものか、この分野で働くことに関心がある方にも参考になると思います。

グループ会社の名前を出して訪問してくる会社があったら、その会社の公式サイトに代理店一覧が載っていないか見てみてください。
相手の立場がわかれば、落ち着いて話を聞けます。

まとめ

卒FITを迎えても、パネルは発電を続け、売電もできます。
変わるのは買取単価で、東京電力エナジーパートナーの例では1kWhあたり8.50円です。

  • 通知が届いたら、まず「自動で継続されるか」を確認する
  • 31円の電気を買わずに済ませるほうが、8.5円で売るより家計に効きやすい
  • まずは昼間に家電を動かすなど、お金のかからない方法から試す
  • 蓄電池やV2Hは「何年で取り戻せるか」と停電への備えをあわせて考える
  • 訪問営業にはその場で決めず、複数社の見積もりを比べる

卒FITは、電気の使い方を見直すいい機会です。
まずは検針票や売電の明細を出して、1年でどれくらい電気を売っているかを確かめてみてください。
数字が手元にあれば、どんな提案を受けても自分の家に合うかどうかを落ち着いて判断できます。

最終更新日 2026年10月27日 by sticep